付き合っていた恋人が粘着質で、別れ話のもつれからストーカーになった。交際を申し込まれて断ったが、それに恨みを持たれてストーカーをされている。職場の上司からつきまとわれている…

ストーカー行為に悩まされている人は少なくありませんが、その中でもタチが悪いのが、ストーカーによる脅迫行為です。たとえば、「殺してやる」「お前の彼氏を殴る」「会社にいろいろなことをバラしてやる」など、ストーカーは相手の気を引くためにいろいろなことを言ってきます。

ストーカーからの脅迫行為を受けた時、どんな対処をすればいいのでしょうか?警察に相談し、逮捕を求めることはできるのでしょうか。この記事ではストーカーからの脅迫行為に対する対処について解説します。

ストーカーや脅迫による5つの被害事例

ストーカー行為を受けて困っている人は残念ながら少なくありません。特に多い被害事例や相談内容をピックアップしました。

1.メールで脅迫される

最近では、メールアドレスを相手に知られていなくても、SNSのアカウントを通じて手軽にメッセージを送りあえる時代になりました。そのため、見知らぬ人からいきなりメッセージが届くことは珍しくありません。

ストーカーの多くが、ストーキングをしている相手にダイレクトメールを送っています。最初はラブレターのようなものだったかもしれません。しかし、自分の期待していない返答が来たり、無視されたりすることでどんどん内容はエスカレート。「どうして返事をくれないんだ」「誰か他の人といるのか」という内容に変わり、「おかえり

「今日は楽しかったみたいだね」といったように、監視していることを伝えて来たり、最終的には「殺してやる」「家に行く」といった害悪を告知する内容に変わってしまうこともあります。

2.家に帰ると電話がかかってくる

ストーカーは異常な執着心を持って相手につきまといます。生活スタイルや勤務先、交流のある人のことなども調べて知られていることが多く、日常的に尾行やつきまといなどを行なっている人も。

そのため、家に帰った途端に電話がかかってくるといった被害も報告されています。相手にわざわざ電話で伝えることで、自分の存在に気づかせるという目的です。ひどいものになると、合鍵を勝手に作られて留守中に家を漁られていたり、帰宅時に家の中でストーカーが待ち伏せをしていたという例も。

3.つきまとわれ、暴力を振るわれた

残念なことですが、ストーカーに付きまとわれて暴力を振るわれる傷害事件は後を絶ちません。ストーカーの中には、「可愛さ余って憎さ百倍」という言葉があるように、好きで仕方ない相手が振り向いてくれないことで、思いが憎しみに変わってしまい、「振り向いてくれないなら殺してやる」という心理状態にまで至ってしまう危険人物もいるのです。

最寄り駅で自転車を停めているところを狙われたり、家の中で待ち伏せされていたり…予測がつきにくい事件が多発しています。ただ、ここまでくると脅迫の域を超え、傷害罪や殺人未遂という重大な犯罪になっていきます。

4.弱みを握られ、交際しないとバラすと脅された

ストーカーがどんな情報を握っているかは知る由もありませんが、自分が想定しているよりもはるかに多くの情報を握られていると考えておくのが賢明かもしれません。普段気にしていないSNSの書き込みから情報を抜き取られたり、ひどいものになると盗聴や盗撮を仕掛けてプライベートな情報を盗み見たり、といったことも行われています。

こうした情報を握られ、自分と交際しないとこれらの情報をバラすぞ、といった脅しを受けてしまうケースもあります。

5.嫌がらせを受けている

動物の死体を送りつけられた・凶器の入った郵便物が届いたといったように、嫌がらせを受けるケースもあります。こういった被害も脅迫の域を超えています。また、SNSで有る事無い事言いふらされる、誹謗中傷を受けるといったものも。

厳密には脅迫行為とは言えないかもしれませんが、嫌がらせ行為によって自分の存在をアピールしてくるのも、ストーカーの特徴です。

ストーカーと脅迫罪の線引きはどこ?

自分や親しい人がストーカーの被害にあっている時、とにかく「警察に言って逮捕してほしい」と考えるのは自然なことです。しかし実際に相談に行った時に、自分が思っていたよりも軽い扱いを受けてしまうこともあります。

よくあるケースですが、ストーカーにされたことに対して「今の言葉って脅迫にあたらないの?」「これって脅迫罪で逮捕できないの?」と被害者側が思うことも少なくありません。ストーカーと脅迫の線引きはどこにあるのでしょうか。

なぜ線引きが必要?

ストーカーの被害に遭っている人にとってみれば、相手の行為が脅迫であろうが、恐喝であろうが、ストーカーであろうが構わないもの。「とにかく被害を何とかして欲しい!」ただそれだけです。しかし、実際にトラブルに対応する警察や弁護士などからすると、その行為がどんな犯罪にあたるのか、どんな法律に違反していると言えるのかはとても大きなポイントになります。

ストーカーからの被害は、今は『ストーカー規制法』という犯罪で明確に規定されました。この法律では、ストーカーとはなにかという定義をしっかり行い、それに対する対処法についても詳しく定めています。しかし中には、ストーカー規制法では規制できないもの、もっと重い処罰を求めるべきものなどもあります。

脅迫を受けている場合、それがストーカー規制法違反か脅迫罪という犯罪に当たるかによって、以下のような違いが出てきます。

刑罰の重さ

ストーカー規制法に違反すると、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金となり、行為の悪質度によってはさらに刑罰が重くはなりますが、それでも1年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。それに比べて脅迫罪の場合は『2年以下の懲役又は30万円以下の罰金』となっており、懲役の年数でいえば脅迫罪の方が重いのです。

さらに脅迫ではなく恐喝罪にあたるとなれば、罰金刑はなく10年以下の懲役とさらに重くなります。刑罰の重さは、相手の行為を抑止する力になりますので、同じ行為でも、規制法に違反するだけでなく、脅迫罪や恐喝罪とも言えたほうがいいということになります。

脅迫罪には恋愛感情は不要

ストーカー規制法では、処罰の対象はストーカーです。この法律には、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」として、加害者に対して恋愛感情や好意の感情が求められます。

一方で脅迫罪にはそういった恋愛感情は求められません。恋愛感情や好意がない相手に対してストーカーを行なってもストーカー規制法には抵触しないことになりますが、脅迫罪であればそのような感情がなくても成立するのです。

脅迫罪は1度の行為でも成立する

ストーカー規制法では、つきまといや待ち伏せを規制していますが、実際にストーカーの行為と言えるかどうかには「反復性」が求められます。すなわち、一度だけつきまとった・一度だけ待ち伏せたというだけではストーカー規制法には違反せず、何度も行ったかどうかが判断の基準の一つになるのです。

これに対して、脅迫罪は一度脅迫しただけで犯罪が成立します。この点も大きく異なるところです。

ストーカーから脅迫された時に試してほしい7つの対処法

では、実際にストーカーから脅迫された時の対処法についてお伝えします。対策法の中には、ストーカーの性格や状況によってはかえって逆効果になる可能性があるものもあるので、慎重に判断してください。

1.できるだけ1人にならない

まずは、できるだけ1人にならないということ。これは基本的に気をつけておきたいことです。ストーカーは、1人になったところを狙って脅迫してきたり、接触してきたりします。

例えば夜道を歩く際は大通りを歩くようにする、暗い道はタクシーを使う、可能であれば家に帰らずに実家や友人のところに泊まる、ホテルに泊まるといった対策を立てるなどして、相手が接触する隙を作らないことも必要です。

2.SNSの書き込みは控える・個人情報が漏れないようにする

SNSに何気なく投稿した写真から、それがどこなのかを分析されるということは実はよくあること。行きつけのカフェや通勤途中の風景など、反復して訪れる可能性のある場所や生活圏に近い場所の写真は、特に要注意です。

また、日頃からやり取りをしている人やフォロワーなどが知られることで、ストーカーに交友関係や勤務先、取引先などの情報を掴まれてしまう可能性もあります。ストーカーの被害にあっていると感じたら、SNSの書き込みは控えるほか、過去に投稿した記事や画像も全て完全に消去しておくことが重要です。

また、SNSではありませんが、自宅のポストやゴミ箱を漁られて情報を抜き取られることもあります。ポストやゴミ箱には、最悪見られても問題ないものだけを入れ、個人情報がわかるものについては、持ち歩く・シュレッダーで完全にわからない状態にして捨てるといった対策をたてるようにしましょう。

3.防犯対策を怠らない

ストーカーの中には、留守中に家に忍び込んでプライベートなものを漁るという悪質な人もいます。そういった被害にできるだけ遭わないようにするためにも、防犯対策はしっかりと行いましょう。

賃貸に住んでいるのであれば、窓の鍵を二重にする・家の中にカメラを設置して、留守中はチェックできる状態にしておくなどの対策も有効です。また、誰か入って来た痕跡があれば、それをしっかり残しておくこと。証拠として使えますので、それを持って警察に行けば話が早いこともあります。

4.家やロッカー、ポストの鍵を変える

まず行いたいのが、鍵を変えること。お金がかかってしまうことではありますが、命には変えられません。自宅玄関の鍵だけではなく、勤務先のロッカーや机の鍵なども検討しておきましょう。鍵を変えるときには、合鍵を作れないものにすることが重要です。

5.感情的に対処しない・意思表示をしっかり行う

ストーカーから接触された時に、ただ怯えてしまって相手の言うことを言われるがままに聞いてしまう、というのは避けたいもの。そうすることで、「こちらの言うことを聞いてくれる」と勘違いし、助長する可能性が高いからです。

また、曖昧に返答をすることによって、ストーカーは自分の都合が良いように解釈していきます。「あのとき付き合ってくれるって言ったよね」「家に来ていいって言ったよね」といったような勘違いをされないためにも、ストーカーからの要求に対してはきっぱりと「できません」と断る意思表示を行いましょう。

しかしそこで注意しておきたいのが、感情的にならないこと。「気持ち悪い」「二度と連絡してくるな」というような言葉を投げたくなることがあるかもしれませんが、それによって相手を刺激してさらなる恨みを買ってしまうことを防ぐためにも、冷静に対処することを心がけましょう。

6.外部の人に相談しておき、被害の事実を記録しておく

ストーカーからの脅迫被害にあったら、1人で抱え込まずに他人の協力を仰ぐことも必要ですが、他人に相談することにはもう一つの目的があります。それは、自分がストーカー被害に遭っているという事実を、1人でも多くの人に知っておいてもらうという『記録』の目的です。

相談する時には、できるだけ具体的な情報を相手に伝え、加害者がどういう人なのか、本名や出会った経緯、どんなことをしてくるのかといったことも細かく伝えておきましょう。そうすることで、もし裁判になった時にも相談相手に証人として裁判に参加してもらい、具体的な情報を法廷で話してもらうこともできます。

7.時には物理的な避難も必要

単に素性を知られていない人から執拗にSNSで付きまとわれている、と言うような場合であれば、アカウントを削除すればそれ以上の被害は生じないかもしれません。しかし、リアルな場でストーカーの被害に遭っていて、怖くて家に帰ることができない・職場にストーカーがいる、というようなときには、最悪の場合は自分の身体や生命に危害が及ぶ可能性があります。

もしその場合は、引っ越しや転職も視野に入れる必要があるかもしれません。ただこの場合は、いきなり目の前から姿を消したという事実にストーカーが刺激され、転居先を突き止めて来る、より過激な行動に出るといった可能性も否定はできません。転居については慎重な判断が必要です。

ストーカーの脅迫被害を警察に相談する時の注意点

ストーカーから脅迫されているとき、真っ先に思いつくのが警察への相談ではないでしょうか。しかし、実際に警察に相談しても対処してくれなかった、と不満を抱える人も少なくないようです。

ストーカーの被害について警察に相談に行く時には、本当に被害に遭って困っていることをしっかりと伝えるためにも、以下のことに注意しておきましょう。

単なる痴話喧嘩だと思われないこと

ストーカーの多くが、元恋人や元配偶者、または知人であって、最初は良い関係を築いていたという相手です。そしてあることを境にストーカー化することが多いのが特徴です。こういった相手の場合、警察では「単なる痴話喧嘩なのではないか?」「犯罪や刑事事件ではなくて、民事のトラブルなのではないか?」と判断されることがあります。

そうすると、警察は「民事不介入だから」「本当に困ったらまた来てください」などといって、具体的な対応をしてくれないことがあります。そう思われないためにも、実際にどんな被害を受けているのかや証拠をしっかり示し、痴話喧嘩やプライベート上のトラブルではなく、刑事事件として扱ってほしいものでその根拠もあるということを示す必要があります。

具体的な証拠を集め、整理しておく

先ほども触れましたが、民事のトラブルだと思われてしまうと警察はなかなか動いてくれません。そう思われてしまう背景には、証拠や根拠の薄さというのも影響しているようです。

ただ相談に行って「こんな被害に遭っている」「辛い」などと主観的な感情だけを訴えても、具体的な証拠がなければ、第三者である警察はその被害が本当なのかを判断できません。

送られてきた手紙、かかってきた電話を録音したもの、防犯カメラの映像など、ストーカーに遭っている証拠、脅迫されている証拠をしっかり用意しておきましょう。

ストーカーの個人情報を集めておく

ストーカー規制法に違反する行為だと認められれば、警察はストーカーに対して、警告などの対策を取ってくれます。そのためにも、相手を特定するための情報を集めておきましょう。現住所や本名、連絡先といった基本的な個人情報を押さえておくことで、その先の訴訟なども見据えた準備ができます。

できれば弁護士を同行させる

警察に相談に行った際、自分1人だとなかなかうまく警察の担当者に状況を説明できなかったり、必要な情報や証拠を事前に集めることができていなかったりして、警察から「また改めて来てください」と言われてしまったり、「警察が動くのは難しいです」と言われてしまうこともあります。

そうなることを避け、できるだけ警察に動いてもらう必要がありますが、そのために効果的なのが、弁護士を同行させること。被害者が警察に来る前に弁護士に一度相談しているという事実が警察にもわかることで、「弁護士が事件性があると思ったほどのもの」という事実を警察に伝えることができます。

また、警察に相談に来る前の段階で弁護士が証拠集めなどの的確なアドバイスを終えているため、警察も対応してくれやすくなるのです。なかなか警察が対応してくれない、1人で行くのは不安、と考えるなら、ぜひ弁護士を活用してみてください。

ストーカーから脅迫の被害にあったら弁護士に相談を

最初は恋人や友人としていい関係を築いていたのに、感情のもつれから相手がストーカーしてしまうことは残念ながら少なくありません。単なるつきまといだけではなく、「殺す」などと脅迫してくるストーカーもいるのです。

脅迫行為だけで、実際に加害行為に出る人は確かに少ないのかもしれませんが、脅迫されている行為を放置しておいて良い方向に進むことはそう期待できるものではありません。ストーカーの被害に遭ってしまったら、まずは弁護士に相談してください。

今どういった対策が必要なのか、今後どう動けばいいのかなど、法律と交渉のプロがサポートします。