ネットの書き込みで脅迫罪になる?警察は動かない?弁護士が回答

ネット上で脅迫してきた人を警察に逮捕してもらって刑務所送りにしたい。

顔も身元もわからないことを利用して自分を脅してくる卑怯な相手にそのような考えを抱くのは自然なことです。

しかし、次のような疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。

  • 「どのような書込みであれば脅迫罪が成立するの?」
  • 「どんな方法で犯人の身元を突き止めるの?」
  • 「ネットで脅迫して逮捕された事例はある?」
  • 「警察は動かない?」

そこでここでは、これらの疑問を解消できるよう弁護士がわかりやすく解説していきます

法律に詳しくなくても7分ほどで読めるようになっています。

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ネットでの書き込みは脅迫罪になる?

脅迫罪とは、ある人やその人の親族の、生命・身体・自由・名誉・財産に対して危害を加えることを告知して脅すことです(刑法222条)。

殺してやる(生命)、殴るぞ(身体)、監禁してやる(自由)、知られたくない事実を皆に拡散するぞ(名誉)、車を破壊してやる(財産)。こういった書き込みをすれば脅迫罪になり得ます。

これらの脅迫文言は、対面・手紙・電話・メール、どの手段によって伝えられても相手にしてみれば怖いことに変わりありません。それは、ネットの書き込みであっても同様です。

そのため、ネットに脅迫の書き込みをした場合も脅迫罪は成立します

具体的な危害内容でなくても脅迫になる?

例えば、「呪い殺してやる」「天罰が下るだろう」「お前の家にだけ隕石を落とす」「必ず恨みを果たしてやる」といった実現不可能なものや抽象的な表現では脅迫罪とはなりません

法人に対する害悪の告知でも脅迫になる?

脅迫の対象となるのは、自然人である”人”であって、法人に対して危害を加える書き込みをしても原則として脅迫罪にはなりません

しかし例えば、「会社を爆破してやる」とネットに書き込んだとすれば、その会社の従業員からすれば命に関わることですので恐怖を感じることでしょう。

そのため、法人に対しての脅迫が、その法人の代表者、従業員、関係者等に対する脅迫であると捉えることが出来る場合はこれらの人々に対する脅迫罪が成立することもあります

加害対象者が怖がらなくても脅迫になる?

ネットに人を脅迫する書き込みをしたものの、加害対象者が畏怖(怖がること)しなかった場合でも脅迫罪は成立します

脅迫罪は、”客観的にみて一般人が怖がる言動”をすれば成立する犯罪です。

実際に相手が怖がるかどうかは主観の問題ですので、相手が怖がらなかったとしても客観性を満たしていれば脅迫罪に該当するのです

直接的でなくても脅迫になる?

例えば、Aさんの運営するブログ、Aさんのtwitterやfacebookのコメント欄に、「ぶっ殺してやる」といった書き込みがされたとします。

その書き込みはAさんに向けられたものであると考えるのが通常ですので、Aさんを直接的に脅したと捉えることができます。よって脅迫罪が成立します。

では、Aさんの運営ブログやSNSとは全く無関係の掲示板(5chや爆サイなど)にAさんに危害を加える内容の書き込みがされた場合はどうでしょうか。

この場合でも、脅迫罪は成立します

なぜなら、仮にAさんがその書込みを目にすることがなかったにせよ、他の人からその事実が伝えられる可能性は十分あるからです。

加害対象者が不明確でも脅迫になる?

例えば、ある人が、「明日、とある小学校にサバイバルナイフと斧を持参して潜り込み、生徒をメッタ刺しにします」という殺害予告をネットの掲示板に書き込んだとします。

このような殺害予告や犯行予告のケースでは加害対象者が広範囲で明確ではありません

そのため、脅迫罪ではなく、警備をすることとなった警察や対象とされた機関や施設(今回の例でいえば小学校)の正常な業務を妨害したとして、業務妨害罪(刑法233条、234条)が適用されるのが一般的です。

脅迫罪が2年以下の懲役または30万円以下の罰金であるのに対し、業務妨害罪は3年以下の懲役または50万円以下の罰金ですので、より重罪であると言えます。

ただし、「新潟駅の放火すると2ちゃんねるに書き込んだ男が脅迫容疑で書類送検された事件」もありますので、不特定多数の者への犯行予告でも脅迫罪が成立する余地も残されています。

犯人の身元を突き止めるまでの流れ

警察が動いてくれる場合、次のような流れで犯人の身元を調べます。

  1. 掲示板やSNS等のサイト運営者に警察が捜査関係事項照会書を送付。
  2. サイト運営者が犯人のIPアドレス(ネット上の住所のようなもの)を警察に開示。
  3. IPアドレスから犯人が契約しているプロバイダ(OCNやso-net、@nifty等)を調べる。
  4. プロバイダに警察が捜査関係事項照会書を送付。
  5. プロバイダが犯人の契約者情報(氏名・住所等)を警察に開示する。

捜査関係事項照会とは、刑事訴訟法条第197条2項の「捜査については、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。」という規定を根拠に、捜査に必要な情報の開示を求める制度です。

なお、この捜査関係事項照会は、強制力はありません。サイト運営者もプロバイダも、犯人のIPアドレスや個人情報を開示する義務はありません。

しかし、開示しないでいる間にネットに書き込まれた殺害予告が実行されてしまうなどの被害が生じた場合、犯罪の幇助(手助け)として罰せられる怖れもあるため、任意で開示に応じるのが一般的です。

警察でなくても犯人の身元特定は可能?

可能です。

ネット上で脅迫されたことに対する慰謝料請求をする場合、犯人の身元を特定するためには、プロバイダ責任制限法という法律に基づいて、発信者情報開示請求という手続きを行います。

流れとしては警察が開示請求する場合と同じで、捜査関係事項照会書の代わりに発信者情報開示請求書という書面を送るものとここでは理解してください。

ただし、警察による開示請求と比べて、一般人からの開示請求に応じてくれる割合は低いため、仮処分の申し立てや訴訟といった手続きを踏まなくてはならないケースもあります。

ネットで脅迫した犯人を突き止めて慰謝料請求したい方は、以下の2つの記事をしっかりと読んで、身元特定の方法について理解しておきましょう。

ネットで脅迫して警察に逮捕された事例

ここでは、ネット上に脅迫の書き込みをして実際に警察に逮捕された事例を幾つか紹介します。

豊見城署は8日、インターネット上で20代女性に対し「絶対に殺す」などと殺害をほのめかす投稿をしたとして、脅迫容疑で兵庫県神戸市の大学生の男(34)を逮捕した。「逆恨みからやった」などと容疑を認めている。容疑は、6月にツイッター上に殺害をほのめかすメッセージを投稿し、脅迫した疑い。

SNS上で税務署職員を脅したとして、埼玉県の川口署は20日、脅迫の疑いで、川口市伊刈、塗装業の男(30)を逮捕した。

逮捕容疑は7月25日、自身が使用する短文投稿サイト「ツイッター」に「こいつやっぱ殺すか」などと投稿し、西川口税務署の20代男性職員を脅迫した疑い。

同署によると、男は男性職員を名指しし、「殺したい」「死ね」などと投稿した。男性職員は男の会社の担当でお互いに面識があった。納税の関係で何らかのトラブルがあったとみられる。別の職員が投稿に気付いて西川口税務署に連絡。同税務署が今月2日、川口署に届け出た。男は「イライラしてやった」と容疑を認めているという。

小説やコラムなどの執筆で知られるセクシー女優の紗倉(さくら)まなさんに対し、ツイッター上で「殺すぞ」などと脅迫したとして、警視庁が脅迫容疑で無職の男を逮捕していたことが12日、捜査関係者への取材で分かった。

捜査関係者によると、男は住所不定の矢沢春彦容疑者(43)。逮捕容疑は3日午後11時20分ごろ、紗倉さんのツイッターのアカウントに「女だろうが容赦しねーぞお前」「半殺しにしてやるよ」などと投稿し、脅したとしている。同庁は認否を明らかにしていない。紗倉さんはツイッターで出演番組や執筆活動などについて投稿していた。

ネットでの脅迫は警察は動かない?

「ネット上での脅迫では警察は動かない」

そのよう考えている人が少なからずいるようですが実際のところ、ネットでの脅迫罪での検挙件数はどのようになっているのでしょうか。

以下の画像で示す通り、警察庁の広報資料によると、ネットでの脅迫による検挙率は平成30年度では3.8%です。一見すると少ないように見えますが、ネット犯罪の検挙数が合計8127件(不正アクセス禁止法違反と不正指令電磁的記録に関する罪を除いた数 )と多いためそのように思えるだけで、件数にすると310件にもなります

警察庁の広報資料内の、平成30年度ネット犯罪検挙数の円グラフ

とはいえ、ネットで脅迫されたからといってそう易々と警察が被害届を受理してくれるかと言えば話は異なります

ネットで脅迫して逮捕された事例を見れば、警察に脅迫の容疑で逮捕されているのは人の生命や身体に危害を加える具体的な書き込みをしたケースであることに気付くはずです。

例えば、タレントのアグネス・チャンがネットに脅迫的文言を書き込まれて警察に相談に行ったが動いてくれず、殺害予告の書き込みをされて初めて警察が捜査・逮捕に踏み切った事件もありました。

参考:アグネス・チャンさんに殺害予告 「アグネス御殿は血まみれに」 脅迫容疑で捜査・警視庁

犯人と被害者との関係性、書き込みされるに至った経緯などによって異なりますので一概には言えませんが、命の危険があるなど、よほど緊迫した状況でなければ警察が動いてくれない可能性があることも認識しておきましょう。

ネットで脅迫されたら弁護士に相談

警察が動いてくれない場合には、弁護士に刑事告訴の代理を依頼するのも一つの方法です。被害者本人が告訴状を提出した場合に比べて受理してくれる可能性が上がるためです。

また、犯人を刺激して逆恨みされたくない、警察沙汰にして大ごとにしたくないといった方もいるでしょう。

その場合は、弁護士が発信者情報開示請求等の手続きを代理して、脅迫の書き込みをした者の身元を割り出し、今後二度と脅迫をしない旨の約束を取り付ける等の交渉をすることもできます。

また、警察が取り合ってくれなかった場合でも、弁護士が慰謝料請求することで民事上の責任追及をすることも可能です。

弁護士によって得意分野も異なりますので、脅迫被害だけでなくネット誹謗中傷被害にも詳しい弁護士に相談するようにしましょう

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